東京商工リサーチの調査結果によれば、2019年に倒産した545社の企業のうち、増収であった企業は42,75%であったと報告しています。
参考資料:東京商工リサーチ「2019年倒産企業の財務データ分析調査」
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200416_01.html
利益が上がっていて決算が黒字であるにも関わらず倒産してしまういわゆる「黒字倒産」は、入金と支出のタイムラグによって引き起こされます。
新型コロナウイルスの感染拡大は、2022年2月現在で第6波のピークに達しており、企業も出口の見えない不況の中で経営難に喘いでいます。
この記事では、資金ショートを起こしそうな企業の特徴とその対策、そして具体的な資金調達について解説していきます。
資金ショートで倒産しやすい会社の特徴
冒頭で述べましたとおり、資金ショートは入金と支出のタイミングのずれによって起こります。
たとえば、5月1日にA社から500万円の商品を買い、5月20日の支払いにしたとします。
そして、A社から仕入れた商品をB社に5月10日に700万円で売って、5月末日の入金となる契約となりました。
A社から500万円で仕入れたものをB社に700万円で売るわけですから、当然200万円の利益が出るはずです。
しかし、ここで出入金のタイミングが問題になります。
A社へ商品代金を支払うのは5月20日ですが、B社から商品代金を受け取るのは5月31日です。
5月20日の時点で、500万円の資金が手当てできれば問題ありませんが、内部保留などの蓄えや資金がない場合は、帳簿上、黒字であるのも関わらず支払いができないで不渡りを起こし、倒産してしまうことになります。
小さな会社ほど資金ショートを起こさないことが重要になりますが、そのためには資金繰りを適切に行うことが不可欠といえるでしょう。
では、黒字倒産しやすい会社の特徴とはどのようなものでしょうか。
自社と比較して参考にしてください。
【 黒字倒産しやすい会社の特徴 】
・売掛金が多く、資金調達や債権回収への動きが遅れる。
・資金繰りに困ったときに支援してくれる金融機関との付き合いがない。
・どんぶり勘定で資金需要の時期を把握していない。
・常日頃の帳簿管理や資金繰り表の作成を行わず、自社の資金繰りを把握していない。
資金繰りが怪しくなったら考えたい対策
会社の資金繰りが悪化する一般的な要因としては、過剰な設備投資が挙げられます。
小さな会社の場合は、パソコンのリース代などの固定費が、思いのほか重荷になって毎月の出費を押し上げているケースも多く見受けられます。
数万円単位の固定費が重なり、利益が出る目安となる損益分岐点を押し上げ、その結果、売り上げが大きく減少しなくても単月赤字になってしまうこともあります。
基本的に資金繰りは現金ベースで考えておく必要があります。
帳簿上、黒字であっても実際の手持ち現金がない状態で支払いができないと、前述した黒字倒産になりかねません。
そして、目先の支払いを何とかしなければならないときは、体裁などにかまっていられませんので、「資金を調達する」、「支払いを先送りしてもらう」、「資産を売却する」といった方策でお金を確保するしかありません。
「資金を調達する」いちばん手っ取り早い手段は融資を受けることです。
借入先は、金融機関・公的機関・自治体・ノンバンクなどが考えられます。
「支払いを先送りしてもらう」には、「支払い・返済リスケジュール」が必要になります。
リスケジュールとは、債務の返済条件を変更してもらうことを指します。
当然のことながら、リスケジュールは電話やメールで済む話ではなく、相手企業との交渉が必要になりますが、期限を先延ばししてもらうことでその期間内に入金があれば支払い可能となり、黒字倒産を防げます。
また、「資産を売却する」は文字どおり所有資産を換金することです。
単純に所有している不動産や車を売却して現金化する方法や、解約返戻金がある保険を解約してお金を確保する方法などが考えられます。
会社の資産は、形のあるものだけではありませんので、換金できる資産がないかを慎重に検討することが肝要です。
資金調達のため融資を受ける金融機関の特徴
資金繰りのため、融資を受けたいとき真っ先に思いつくのは、銀行やノンバンクなど民間の金融機関でしょう。
とりわけ日常的な入出金のための口座を持っている銀行は、融資の申し込み先としては最も身近な存在といえるかもしれません。
しかし、このコロナ不況が続く中、そうそう簡単にお金を貸してくれないのが実情です。
ここでは、代表的な各金融機関の特徴を紹介していきます。
都市銀行
提出書類の数字を精査して、理路整然とした説明が求められるため、どのような質問にも答えられるようにしておく準備が必要です。
融資にあたっては、営業力や技術力よりも財務内容が厳しく問われます。
ただし、融資の審査は数日以内で迅速に行われ、何よりも金利が安いのが大きなメリットです。
信金・信用組合
担当者との信頼関係が構築できるかが重要なポイントになります。
地域への貢献度や自社の将来性をアピールすることが大事です。
定期預金や積み立てをしていれば、評価がよくなる場合もあります。
ノンバンク
審査が早く、融資の実行も早く受けられますが、金利が高いのがデメリットといえます。
将来的な金利負担や返済額を慎重に検討することをおすすめします。
日本政策金融公庫
個人企業や小規模企業向けの小口資金として、平均700万円程度の貸付を行っています。
また、取引先企業の倒産などにより経営がひっ迫している場合には、別枠の制度も用意されています。
商工組合中央金庫
設備資金や長期運転資金など、主に中小企業の事業に必要な資金に対して、幅広い融資を行っています。
地方公共団体
小さな会社向けの小口資金融資や起業・分社化を支援する融資、あるいは新製品開発や多角化などのさまざまな取り組みを支援する融資制度が設けられています。
自治体によって内容が異なるため、役所の窓口やホームページでチェックするといいでしょう。
まとめ
資金繰りが危なくなったときの資金調達は、やはり金融機関からの融資を考えてしまうことが多いでしょう。
しかし、金融の分野では「審査が厳しくお金を借りることが難しい」機関ほど金利が安く、その逆に「比較的審査が甘くお金を借りやすい」機関ほど金利が高いのが常であることを忘れてはいけません。
せっかく融資を受けて、取引先に支払いができて黒字倒産を免れたのに、その後の返済で高利に圧迫され経営が危ぶまれるようでは本末転倒になってしまいます。
融資を受けるにしても、複数の機関を利用するなどリスクを分散した資金調達を考えるのも一案です。
「帳簿管理が不適切なため資金繰り計画が把握できていない」「売掛金がうまく回収できず資金ショートすることが度々ある」などでお悩みの企業責任者の方は、是非一度「町田中央コンサルティング」にご相談ください。
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